要介護認定が思ったより軽いと感じたら――認知症の介護で伝えたい、日常のこと

「要介護認定が思ったより軽いと感じたら」の見出しと、ノートを広げたテーブルで高齢女性の話に耳を傾けるかいとを描いた水彩画風イラスト。 介護の仕事

「思っていたより、軽い認定だったな」

私にも、義理の両親の要介護認定で、そう感じた経験があります。

義母は、夜中に自転車に乗って出て行ってしまうことがありました。

同居している義兄も、体調を崩していました。

その二人の面倒を見ていたのは、腰の曲がった義父でした。

本人が何をできるかだけでなく、誰が、どのような身体で、その暮らしを支えているのか。

家の中の状況を、もう少し総合的に見てほしい。

当時、そんな思いを抱きました。

この記事では、認定結果に戸惑ったときに知っておきたい制度の考え方と、日々の介護を具体的に伝える方法を整理します。

家族の大変さを、家族だけで抱え込まないために、一緒に考えていければと思います。

「思っていたより軽かった」と感じる人はいる

大阪市の令和4年度高齢者実態調査では、介護保険サービス利用者の回答3,038件のうち、直近の要介護認定に「やや不満」「不満」と答えた割合は、合わせて14.7%でした。

さらに、不満があると答えた448人のうち、67.6%が「認定結果が思っていた介護度より軽かった」を理由に挙げています。理由は複数回答です。

これは2022年の大阪市の調査であり、全国の割合や、認知症の家族だけの割合ではありません。

また、不満があったことが、そのまま誤った認定だったことを意味するわけでもありません。

それでも、認定結果と、日々感じている介護の大変さとの間に、隔たりを感じる人がいることは分かります。

要介護度は、家族の大変さすべてを表す数字ではない

要介護認定は、本人にどれくらい介護が必要かを判断する仕組みです。

そのため、病気の重さと要介護度は、必ずしも一致しません。

身体がよく動く方でも、認知症に伴う行動への対応などに、多くの介護を必要とする場合があります。

一方で、家族の心配や心理的な負担が、そのまま要介護度に上乗せされる仕組みではありません。

2026年10月26日の介護保険部会の資料でも、家族の心理的な負担は、現在の認定制度では直接の介護時間として評価に反映できないと整理されています。

けれど、それは「家族の状況を話しても意味がない」ということではありません。

例えば、介護する人の身体の状態によって、本人に必要な介助を十分に行えていないこともあります。認定調査の手引きでも、こうした状況を確認し、適切な介助の必要性を判断する扱いが示されています。

本人に必要な介護を伝えること。
その家で介護を続ける難しさを相談すること。

この二つは、どちらも大切です。

ニュースでも、日常の介護を具体的に伝える重要性が示された

2026年10月26日の介護保険部会では、認知症のある方の要介護認定について議論されました。

公表資料では、認定調査の特記事項や主治医意見書に、実際に生じている介護の内容や頻度を具体的に記載する重要性が示されています。

これは、新たな認定基準が決まったというニュースではありません。日常の状況を適切に評価につなげるための論点として示されたものです。

特記事項を書くのは認定調査員です。

家族や介護職にできるのは、調査員がその人の暮らしを理解できるよう、普段の様子を伝えることです。

「認知症があります」だけでは見えにくい毎日を、具体的な言葉にしていきます。

「何が起きるか」と「その後の対応」を一緒に伝える

「夜中に外へ出てしまいます」

この言葉から、どのくらいの介護が必要なのかを想像するのは、簡単ではありません。

そこで、分かる範囲で次のことを具体的に伝えます。

  • いつ起きるか
    「夜中の1時ごろ」「夕方になると」など、時間帯を伝えます。
  • どのくらい起きるか
    「一日に3回ほど」「週に2〜3回」「この1か月で2回」など、回数を伝えます。
  • どのような行動があり、家族がどう対応するか
    「外へ出ようとするため、その都度そばで話を聞き、一緒に過ごしている」など、実際の対応を伝えます。
  • 一回の対応にどのくらい時間がかかるか
    「落ち着くまで20〜30分ほど付き添う」など、時間の目安を伝えます。夜間の対応で家族が眠れないなど、生活への影響も相談してください。

正確な回数や時間が分からなくても、おおよその目安で構いません。「時々」「何度も」だけでなく、数字を添えると、日々の状況が伝わりやすくなります。

認定調査の手引きでも、認知症に伴う行動については、日頃の状況を聞き取り、具体的な介護の内容と頻度を特記事項に記載することが示されています。

例1:夜間の外出について

※以下は、伝え方を示すための架空の例です。冒頭の家族の体験とは別のものです。

「夜中に外へ出ます」だけでなく、

「この1か月で、夜中に自転車で出て行ったことが2回ありました。その都度、家族が探しに出て、一緒に帰宅しています」

というように、出来事と対応を伝えます。

もし、帰宅後も落ち着くまで付き添ったり、家族が眠れなくなったりしているなら、その状況も相談してください。

回数や時間を正確に覚えていない場合は、分からないことまで無理に数字にする必要はありません。

例2:着替えについて

「着替えはできます」だけでなく、

「服を着る動作はできます。ただ、着替えを始めるには声かけが必要で、途中で手が止まるため、そばで順番を伝えています」

と説明すると、できる動作と、必要な支援の両方が伝わります。

大切なのは、できないことを増やして話すことではありません。

できているように見える暮らしを、誰が、どう支えているかを伝えることです。

支えている家族の身体や生活も、相談してよい

「同居家族がいる」と聞くと、支える人がいるように見えるかもしれません。

でも、一緒に暮らしていることと、介護を担えることは同じではありません。

家族にも病気がある。
腰や膝が痛く、身体を支えられない。
仕事中は家にいられない。
ほかにも世話を必要とする人がいる。

そうした事情も、話してよいことです。

私が義理の家族の介護で感じたのも、まさにこの部分でした。

母を支える人がいる。

けれど、その父自身も、身体に負担を抱えている。

「家族がいるから大丈夫」で、その先の暮らしが見えなくなってしまうのは、違うのではないかと思ったのです。

家族の状況は、認定調査の際にも伝え、ケアマネジャーや地域包括支援センターにも相談してください。

地域包括支援センターは、本人だけでなく家族からも相談を受け、医療・介護・福祉などと連携して支援を考える窓口です。

メモは、暮らしを伝えるための補助になる

調査の場では、普段の出来事をすべて思い出せるとは限りません。

本人の前では、話しにくいこともあります。

そのようなときは、短いメモを用意する方法があります。

  • 最近、困った出来事
  • その日時や、おおよその頻度
  • 実際に行った支援
  • 介護する家族が難しいと感じていること

本人の前で説明しづらければ、事前に調査員へ伝え、別に話す方法やメモを渡す方法を相談してみてください。

毎日、詳しい介護日誌を書く必要はありません。

まずは、気になった出来事を一つ残すだけでも、話すときの助けになります。

ただし、悪かった日だけを普段の状態として伝えたり、できることを隠したりするのではなく、状態の波も含めて、ありのままを伝えることが大切です。

メモは、希望する介護度を得るためのものではなく、その人の生活を正確に伝えるためのものです。

認定結果に戸惑ったら、まず説明を聞いてみる

結果を見て、実際の生活と合っていないと感じたら、市区町村の介護保険担当窓口へ相談できます。

どのような状況が判定資料に記載され、どう評価されたのか、確認してみてください。

認定結果への不服を申し立てる審査請求と、本人の状態に応じて認定を見直す区分変更申請は、異なる手続きです。必要な手続きや期限は窓口で確認しましょう。

申請し直せば必ず介護度が上がる、というものではありません。

そして、認定結果の確認とは別に、

「今の支援では暮らしが続けられない」

という困りごとも、ケアマネジャーや地域包括支援センターへ伝えてください。

相談するときに、家族の状況まで整理しきれていなくても構いません。

認定結果は、家族が頑張れる量を決めるものではない

要介護度が思っていたより軽かったとしても、それで家族の日々が楽になるわけではありません。

夜中に外へ出てしまう心配も、支える人の身体の痛みも、そのまま残ることがあります。

だからこそ、認定結果だけで、家族の大変さまで判断しないでほしいと思います。

介護職としても、介護度の数字の向こうにある生活を聞き取る姿勢を、大切にしたいです。

そして、家族の立場で伝えたいのは、

「もっと大変だと、うまく説明しなければいけなかった」と、一人で背負わなくてよい

ということです。

暮らしのすべてを、一度の調査で伝えきるのは難しいものです。

伝えきれなかったことは、あらためて相談してよい。

本人のできることを大切にしながら、その暮らしを支えている人にも、必要な支援が届いてほしいと思います。


参考資料

※制度に関する記載は2026年11月2日時点の確認内容です。個別の認定結果や手続きについては、お住まいの市区町村へご確認ください。

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