介護の仕事をしていると、
「もう辞めたい」
そう思う日があります。
身体が疲れた日。
人間関係に悩んだ日。
一生懸命やっているのに、
うまくいかなかった日。
利用者さんとの関わりに悩み、
自分の介護に自信が持てなくなった日。
私にも、そんな日はありました。
介護の仕事を始めてから25年。
ずっと迷わず、この仕事を
続けてきたわけではありません。
それでも私は、今日まで介護の仕事を続けて
きました。
なぜ続けてこられたのだろう。
改めて考えてみると、そこにはいくつかの
理由がありました。
やっぱり、利用者さんが好きだった
介護の仕事は、大変なこともたくさんあります。
でも、それ以上に私は、利用者さんと
関わることが好きでした。
何気ない会話で一緒に笑ったこと。
「ありがとう」と言ってもらえたこと。
昨日までできなかったことが、今日は少し
できたこと。
言葉にはならなくても、表情から気持ちが
伝わってきた瞬間。
利用者さんから人生について教えてもらうことも、
たくさんありました。
「私が利用者さんを支えるんだ」
そんなふうに思っていた新人の頃の私が、
いつの間にか、
「私の方が教えてもらっている」
と思うようになりました。
これまで出会ったたくさんの利用者さんが、
今の私をつくってくれたのだと思います。
一緒に働く仲間がいたから
そしてもう一つ。
一緒に働く仲間の存在も大きかったと
思います。
介護は、一人ではできない仕事です。
うまくいかない介助について一緒に考えたり、
利用者さんの小さな変化に気づいて情報を
共有したり、
忙しいときには声を掛け合ったり。
時には、
「今日はちょっとつらい」
そんな気持ちを聞いてもらうこともありました。
もちろん、人間関係で悩んだことが
ないわけではありません。
それでも、同じ利用者さんのことを考え、
一緒に悩み、一緒に笑える仲間がいたことは、
私が介護を続けてこられた大きな理由の一つです。
介護は「お世話をする仕事」だけではない
介護の仕事というと、
食事を手伝う。
お風呂に入れる。
排泄を介助する。
車椅子へ移乗する。
そんな姿を思い浮かべる人も
多いかもしれません。
確かに、介護は身体を使う仕事です。
体力が必要な場面もたくさんあります。
でも、25年間この仕事をしてきた私は、
介護はそれだけの仕事ではないと思っています。
「介護職は『考える専門職』」
利用者さんの表情を見て、
「今日はいつもと少し違う」
と気づく。
食事が進まないとき、
「なぜだろう」
と考える。
立ち上がろうとする利用者さんを見て、
「何をしようとしているのだろう」
と、その行動の理由を考える。
昨日までできていたことができなくなったら、
体調なのか、環境なのか、気持ちの
問題なのかを考える。
一つの行動だけを見て判断するのではなく、
その人の身体の状態。
認知機能。
生活歴。
性格。
ご家族から聞いた話。
他の職員が気づいたこと。
いろいろな情報をつなぎ合わせながら、
「今、この人に必要なことは何だろう」
と考え続ける。
介護職は、身体を動かしながら、頭の中では
ずっと考えています。
だから私は、
介護職は身体を使う仕事であると同時に、
考える専門職でもある。
そう思っています。
そして私は、そのことに誇りを持っています。
答えが一つではないから、介護は難しい
介護には、
「こうすれば必ずうまくいく」
という答えがないこともたくさんあります。
昨日うまくいった声かけが、今日は
うまくいかないこともあります。
同じ認知症という診断があっても、一人ひとり
性格も人生も違います。
だから、
考える。
試してみる。
うまくいかなければ、また考える。
仲間と話し合う。
そして、もう一度やってみる。
その繰り返しです。
難しい仕事だと思います。
でも私は、その難しさの中に介護という仕事の
面白さもあると思っています。
介護を通して、私自身も成長してきた
25年前の私は、今の私とはずいぶん
違いました。
利用者さんとの関わり方が分からず、
悩んだこともあります。
自分の考えが正しいと思い込んでいた
こともあります。
失敗したことも、たくさんあります。
でも、そのたびに利用者さんやご家族、
一緒に働く仲間から教えてもらいました。
相手の立場になって考えること。
自分とは違う価値観を受け入れること。
言葉だけではなく、表情やしぐさを見ること。
そして、人にはそれぞれ、それまで歩んできた
人生があるということ。
介護の仕事を通して成長させてもらったのは、
私自身でした。
それでも、辞めたい日はある
ここまで書いてきましたが、
「介護は素晴らしい仕事だから、辞めないで」
と言いたいわけではありません。
どれだけ好きな仕事でも、
つらくなることはあります。
心や身体が疲れてしまうこともあります。
職場を変えた方がいいこともあります。
介護とは違う仕事を選ぶことだって
あると思います。
だから、もし今、
「介護職を辞めたい」
と思っている人がいたとしても、私は、
「もう少し頑張って」
とは言いません。
辞めることも、環境を変えることも、
一つの選択だと思っています。
これまでの自分まで否定しないでほしい
一つだけ、伝えたいことがあります。
もし介護の仕事を辞めることになったとしても、
これまで介護職としてやってきた自分まで、
否定しないでほしい。
利用者さんのために考えたこと。
悩んだこと。
声をかけたこと。
身体を支えたこと。
小さな変化に気づいたこと。
一緒に笑ったこと。
その一つひとつに、意味があったと
私は思います。
誰かの人生の一部に関わり、その人が
その人らしく暮らせるように、
考え、悩み、寄り添ってきた。
それは、とても価値のある仕事です。
介護職であることを誇りに思う。
介護の仕事は楽ではありません。
身体も使います。
頭も使います。
そして、心も使います。
だからこそ、疲れる日があります。
辞めたいと思う日があっても、
おかしくありません。
それでも私は、25年間この仕事を
続けてきた今、
介護職であることを誇りに思っています。
もし今日、
「もう介護を辞めたい」
と思って、この文章を読んでいる人がいたら。
無理に続けなくてもいい。
少し立ち止まってもいい。
違う道を選んでもいい。
でも、今日まであなたが誰かのために考え、
悩み、身体を動かしてきた時間まで、
なかったことにしないでほしい。
介護は、ただ「お世話をする仕事」
ではありません。
人を見て、人を知り、人を考える仕事です。
そして、その人の人生に寄り添う仕事です。
身体で支え、
頭で考え、
心で寄り添う。
私は、そんな介護という仕事に
誇りを持っています。


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