介護職の給料は本当に安い?25年働いてきた私が思う「お金と仕事の価値」

「介護職の給料は本当に安い?」をテーマに、介護職員が車椅子の高齢者に寄り添う様子を描いた水彩イラスト。毎月1万4,000円を年4%の配当で考えると約420万円の投資元本に相当するという視点と、介護の仕事にはお金では得られない価値もあることを表現している。 介護の仕事

「介護職は給料が安い」

そんな言葉を、私はこれまで何度も耳にして
きました。

確かに、介護は決して楽な仕事ではありません。

身体を使います。

利用者さんの小さな変化に気づき、考え、
判断することも求められます。

そして、人の生活や人生に深く関わる
責任もあります。

だから、

「もう少し給料が高かったら」

と思う介護職の気持ちは、私にもよく分かります。

私自身、介護の仕事を25年間続けてきました。

その中で、介護職の給料について考えさせられた、
今でも忘れられない出来事があります。

「結婚するから、介護職を辞めます」

これまで一緒に働いてきた男性職員の中には、
結婚をきっかけに介護の仕事を辞めていった
人がいました。

理由を聞くと、

「この給料では、家族を養っていけないから」

というものでした。

その言葉を聞くたびに、私はとても
寂しい気持ちになりました。

私はそれまで、

「結婚するから、これからもっと
仕事を頑張ろう」

そう考えるものだと思っていたからです。

でも彼らにとっては、

「結婚するからこそ、この仕事を続けられない」

という選択だったのです。

もちろん、どんな仕事を選ぶかは
その人の自由です。

家族の将来を考えて、より収入の高い仕事を
選ぶことも、とても大切な選択だと思います。

それでも、

介護の仕事が好きで、一生懸命働いていた人が、

「家族を持つ」という人生の節目を理由に、
介護の仕事を諦めなければならない。

そのことが、私は寂しかったのです。

やりがいだけでは生活できない

介護には、たくさんのやりがいがあります。

利用者さんから、

「ありがとう」

と言っていただくこと。

できなかったことが、少しできるように
なること。

一緒に笑うこと。

信頼してもらえること。

でも、

やりがいだけでは生活できません。

介護職にも生活があります。

家族がいる人もいます。

子どもを育てている人もいます。

住宅ローンを払っている人もいれば、
将来のために貯蓄をしたい人もいます。

だから私は、

「介護は素晴らしい仕事なんだから、
給料が安くても仕方がない」

とは思いません。

仕事として介護を選び続けられるだけの収入は必要だと思っています。

少しずつ変わってきた介護職の処遇

一方で、私が介護の仕事を始めた25年前と
比べると、介護職を取り巻く環境は少しずつ
変わってきました。

その一つが「処遇改善」です。

国も、介護人材を確保するために、
介護職の賃金を改善しようと制度を
作ってきました。

もちろん、

「まだ足りない」

という声もあるでしょう。

私自身も、仕事内容や責任を考えれば、
もっと評価されてもいい仕事だと思っています。

でも同時に、

国が制度として、介護職の収入を少しでも
底上げしようとしている。

そのことにも目を向けてみたいと思うのです。

毎月1万4,000円を違う角度から見てみる

例えば、仮に処遇改善などによって、
毎月の収入が1万4,000円増えたとします。

月1万4,000円。

この数字だけを見ると、

「たった1万4,000円」

と感じる人もいるかもしれません。

でも、年間にすると、

1万4,000円 × 12か月=16万8,000円

です。

では、この年間16万8,000円を投資の
配当金として受け取ろうとしたら、どれくらいの
資産が必要なのでしょうか。

仮に年間4%の配当利回りで考えると、

約420万円。

つまり、毎月1万4,000円という収入は、
見方を変えれば、

約420万円を年4%で運用したときに得られる
年間配当と同じくらいの金額

になります。

もちろん、処遇改善による収入と投資の配当は
まったく別のものです。

投資には元本割れや減配などのリスクもあります。

それでも、

「1万4,000円」

だけを見るのと、

「420万円の資産から生まれる配当に
相当する金額」

と考えるのとでは、私は少し見え方が
変わります。

「足りないもの」だけを見ない

だからといって、

「介護職の給料は十分だから、
もっと欲しいなんて言わない方がいい」

ということではありません。

もっと給料が上がってほしい。

仕事に見合った評価を受けたい。

そう思っていいと思います。

転職して収入を上げてもいい。

資格を取って収入アップを目指してもいい。

副業を始めてもいい。

お金について勉強して、資産形成を
始めるのもいい。

でも同時に、

今、自分が受け取っているものの価値を
知ることも大切なのではないか。

私はそう思うようになりました。

「足りないもの」だけを数えていると、
いつまでたっても心は満たされないのかも
しれません。

介護の仕事から受け取ったもの

25年間を振り返ってみると、介護の仕事から
私が受け取ったものは、給料だけでは
ありませんでした。

利用者さんから教えてもらったこと。

「ありがとう」と言ってもらえたこと。

一緒に笑ったこと。

時には、私の方が励ましてもらったこと。

仲間と一緒に悩んだこと。

失敗して、自分の未熟さに気づいたこと。

人にはそれぞれ違う人生があることを知ったこと。

そして、

誰かの痛みや寂しさについて、少しだけ
想像できるようになったこと。

これらは、給料明細には書かれていません。

銀行口座の残高にも表れません。

でも、

確実に今の私の中に残っています。

お金で得られる豊かさ、お金では得られない豊かさ

お金は大切です。

私は、それを否定したくありません。

お金があれば、生活の選択肢が増えます。

将来への安心にもつながります。

家族のために使うこともできます。

だから、介護職の給料はもっと上がって
ほしいと思っています。

そしていつか、

「家族を持つから介護職を辞める」

ではなく、

「家族を持っても、安心して
介護の仕事を続けられる」

そんな仕事になってほしい。

これは、25年間介護の現場で働いてきた
私の願いです。

でも同時に、私は介護の仕事を通して、
お金では買えないものもたくさん
受け取ってきました。

誰かから信頼してもらうこと。

人の人生に触れること。

一緒に働く仲間と何かを乗り越えること。

誰かに優しくしてもらうこと。

そして、自分が誰かに優しくできること。

それらに値段をつけることはできません。

今あるものを大切にしながら、もっと豊かになっていい

収入に悩んでいる人に、

「お金なんて大切じゃない」

とは言いたくありません。

お金は大切です。

もっと収入が欲しいと思っていい。

今より豊かな生活を目指していい。

でも、

今あるものに感謝することと、
もっと豊かになろうとすることは、
決して矛盾しない。

私はそう思っています。

「ないもの」だけを見るのではなく、

今、自分が持っているものにも目を向けてみる。

そして、そこからもう一歩、豊かになる
方法を考えてみる。

お金で得られる豊かさもある。

お金では得られない豊かさもある。

どちらか一つではなく、

その両方を大切にできる人生が、
本当の豊かさなのかもしれません。

介護職の給料が、これからもっと上がって
いくことを願いながら。

私は今日も、

介護という仕事から受け取ってきたものを、
大切にしていきたいと思っています。

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