認知症の方と関わっていて、
「どうしたらいいんだろう」
と悩んだことはありませんか?
声をかけても、うまく伝わらない。
良かれと思ってしたことが、
思っていたような反応につながらない。
昨日はうまくいったのに、
今日は同じようにいかない。
いろいろ試してみても、
「これでいいのかな」
と、自分の関わり方に
自信が持てなくなることもあります。
介護の仕事をしていると、
「認知症の方と、どう関わればいいのだろう」
という問いに、
何度もぶつかるように思います。
私も25年間、
たくさんの認知症の方と関わってきました。
それでも、
「これが正解」
という一つの答えを
見つけたわけではありません。
一人ひとり違いますし、
同じ方でも、その日によって違います。
だからこそ、悩む。
だからこそ、難しい。
では、そんなふうに
関わり方が分からなくなってしまったとき、
私たちは、どうしたらいいのでしょう。
今回は、私が認知症の方と関わる中で
大切にしてきたことについて、
書いてみたいと思います。
一生懸命になるほど、見えなくなることがある
認知症の方と関わっていると、
「どうしたら、この方に伝わるだろう」
「どうしたら、うまくいくだろう」
と、一生懸命考えます。
介護職として、その方に少しでも
穏やかに過ごしてほしい。
できるだけ自分の力で生活してほしい。
そんな思いがあるからこそ、
いろいろな方法を考えます。
でも、なかなかうまくいかないこともあります。
何度説明しても、忘れてしまう。
今までできていたことが、
少しずつ難しくなっていく。
一生懸命考えた関わり方が、
うまくいかないこともある。
そんなことが続いているうちに、
「どうしてできないんだろう」
「また、うまくいかなかった」
そんな気持ちが、少しずつ増えていくことがあります。
そして、あるとき気づきました。
私はいつの間にか、その方の
「できないこと」ばかりを見ていたのです。
もちろん、できないことを知ることも
介護では大切です。
何に困っているのかが分からなければ、
必要な支援を考えることもできません。
でも、
できないことを知ることと、
できないことばかりを見ることは違う。
一生懸命なんとかしようとしていたはずなのに、
いつの間にか、私自身の見る場所が
とても狭くなっていたのだと思います。
では、少し違うところを見てみたら、
何が見えるのだろう。
そんなことを考えるようになりました。
見る場所を、少し変えてみる
そこで私は、
その方の「できないこと」ではなく、
「今、できていることは何だろう」
と考えてみることにしました。
難しく考える必要はありません。
自分でスプーンを持つことができる。
声をかけると、こちらを見てくれる。
好きな歌を口ずさむことができる。
タオルを渡すと、畳んでくれる。
笑いかけると、笑い返してくれる。
最初は、そんな小さなことからです。
そして、もっともっと
「できる」のハードルを下げてみます。
手を動かすことができる。
声を出すことができる。
食べることができる。
そして、
呼吸をすることができる。
そこまで視点を広げてみると、
「できないことばかり」
と思っていたその方にも、
たくさんの「できること」があることに
気づきます。
それまで当たり前すぎて、
「できること」として数えていなかった
だけなのです。
一つ見つけると、
「他には何があるだろう」
と、また探したくなります。
私は、そんなふうに
「できること探し」をするようになりました。
昨日まで、
「どうしてできないんだろう」
と思いながら見ていた人を、
今日は、
「この人には、他に何ができるんだろう」
と思いながら見ている。
目の前にいるのは、
同じ利用者さんです。
それなのに、その方が少し違って
見えるようになりました。
見方が変わると、気持ちも変わる
そして、あるとき気づきました。
できることを探すのは、
その方のためだと思っていたけれど、
見方を変えたことで救われていたのは、
私自身の心でもあったのだと。
「できない」と思うたびに感じていた
焦りや、もどかしさ。
「できること」に目を向けるようになると、
その気持ちも少しずつ和らいでいきました。
そして気づけば、
関わることそのものが、
以前ほどつらくなくなっていました。
気持ちが変わると、
声のかけ方や、
その方との過ごし方まで変わっていきます。
それまで、
「私がやらなければ」
と思っていたことにも、
「この方と一緒にできることはないかな」
と考えられるようになりました。
その人の力を、もう一度信じてみる
「できること」に目を向けるようになると、
関わり方も少しずつ変わっていきました。
それまでは、
「危ないから、私がやろう」
「難しいだろうから、手伝おう」
と、いつの間にか先回りしてしまうことが
ありました。
もちろん、安全を守ることは大切です。
必要なところでは、
私たち介護職が支えなければなりません。
でも、
「できないだろう」と決めていたのは、
もしかしたら私の方だったのかもしれない。
そう思うようになりました。
少し待ってみる。
すぐに手を出さず、見守ってみる。
「やってみませんか?」
と声をかけてみる。
すると、こちらが思っていた以上に、
その方自身の力でできることがあります。
全部できなくてもいい。
途中まででもいい。
ほんの少しでも、
その方自身の力でできることがある。
そのことに気づくと、
「できないから手伝う」だけではない
関わり方が見えてきます。
介護は、その方のできない部分を
補うことも大切です。
でも同じように、
その方が今持っている力を、
大切にすることも介護なのだと思います。
何でも代わりにするのではなく、
待ってみる。
見守ってみる。
そして、その方の力を
もう一度信じてみる。
そうすることで、
「私がやらなければ」
と思っていた関わりが、
「一緒にやってみよう」
という関わりに変わっていくことがあります。
利用者さんの持っている力を借りながら、
一緒に生活をつくっていく。
「できない」から少し目を離すだけで、
そんな関わり方も見えてくるのかもしれません。
関わりに迷ったときには
認知症の方との関わりには、
一つの正解があるわけではありません。
昨日うまくいったことが、
今日はうまくいかないこともあります。
一生懸命考えても、
どうしたらいいのか分からなくなることもあります。
そんなとき、
「もっと頑張らなければ」
「もっと上手に関わらなければ」
と、自分を追い込んでしまうことがあります。
でも、頑張ることだけが
答えではないのかもしれません。
関わりに迷ったときは、
すぐに答えを見つけなくてもいい。
相手を変えようとしなくてもいい。
ほんの少しだけ、
いつもとは違うところを見てみる。
そんなとき、
「できること探し」をしてみるのも、
一つの方法かもしれません。
そこには、今まで気づかなかった
その方の姿があるかもしれません。
そして、その小さな気づきが、
関わっている自分自身の心を
少し楽にしてくれることもあります。
見る場所を、ほんの少し変えてみる。
そこから見えてくるものも、
あるのではないでしょうか。

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