「個人情報が漏れた」
「システムが使えなくなった」
そんなニュースを見て、
心配になることはありませんか。
一方で、
「対策をするのは、施設やソフトの会社でしょう」
「自分には、できることが少ない」
と感じる方もいると思います。
確かに、サーバーの安全対策や、
システムの復旧は、
一般の介護職員だけで担えることではありません。
けれど、いつものソフトが使えなくなれば、
記録や申し送り、関係機関との連携など、
日々の仕事にも影響する可能性があります。
大切なのは、難しい技術を覚えることよりも、
「使えない間、どうケアを続けるか」
を職場で確認しておくことです。
この記事では、介護職員の立場から、
仕事への影響と、普段からできる備えを考えます。
情報漏洩と、システム停止は別のこと
ニュースを見るときに、
まず分けて考えたいことがあります。
情報漏洩は、情報が外部に漏れること。
システム停止は、ソフトやサービスを
使えなくなることです。
サイバー攻撃によって、
両方が起こる場合もあります。
ただし、安全確認や被害を防ぐために、
事業者がサービスを一時的に止める場合もあります。
そのため、
「使えないから、情報が漏れた」
とは限りません。
また、使える状態に戻っただけで、
情報漏洩の有無まで分かるわけでもありません。
施設やサービス提供会社の
公式な案内を確認し、
分かっていることと、
まだ確認中のことを分けて受け止めましょう。
対応を、介護職員だけで背負う必要はありません
サイバー攻撃への対応には、
それぞれの役割があります。
ソフトやシステムを提供する会社には、
担当する範囲での安全対策や、
原因調査、復旧対応などが求められます。
施設の運営側には、
事業者との連絡、業務の継続方法、
利用者さんや家族への説明などを
整理する役割があります。
介護職員は、職場の手順に沿って、
必要なケアや情報共有を続け、
困っていることを報告します。
復旧の責任まで、
現場の職員が抱える必要はありません。
ただ、仕事への影響を伝えることは、
現場を知る職員だからこそできることです。
紙の情報があっても、影響が出ることがあります
利用者さんの情報を、
紙でも備えている施設はあると思います。
システムが止まったからといって、
すべての情報が分からなくなるとは限りません。
紙の記録や普段の申し送り、
職員が日々関わってきた経験も、
ケアを続ける支えになります。
ただし、気をつけたいのは、
情報が今の状態に合っているか
ということです。
例えば、
- 食事形態や介助方法が変わった
- 退院時に薬の内容が変わった
- 家族の連絡先が変更になった
- 新しい注意事項が加わった
こうした変更が、
手元の紙に反映されていない場合もあります。
「紙があるから大丈夫」で終わらせず、
いつの情報なのか、
変更をどこで確認するのかまで
分かるようにしておきたいですね。
新規の受け入れでは、情報の確認が課題に
すでに利用している方については、
紙の資料や日々の関わりから、
分かることもあります。
一方、新しく利用する方については、
これから情報を受け取る必要があります。
紹介元との情報共有に使うシステムが止まれば、
必要な情報が予定どおり届かない可能性があります。
例えば、食事や移乗の介助方法、
医療面の注意点などです。
施設として認められた別の連絡方法で、
必要な情報を確認できるか。
今ある情報と体制で、
安全に支援できるか。
受け入れ前に、こうした確認が必要になります。
延期することにも、影響があります
安全な支援に必要な情報がそろわなければ、
受け入れ時期の調整や、
一時的な中止を検討する場面も考えられます。
ただ、簡単に延期できるとは限りません。
介護している家族が急に入院した場合など、
支援を待つこと自体が、
本人や家族の負担になることもあります。
医療では、処置や治療を急ぐ状況もあります。
「情報が足りないまま受け入れる影響」と、
「支援を遅らせる影響」の両方を
考える必要があります。
これは、現場の介護職員一人で
判断することではありません。
管理者や看護職、紹介元、
必要に応じて医療機関などが連携し、
対応を検討することが大切です。
職員は、
「何が分からないのか」
「どの支援に不安があるのか」を、
具体的に伝えていきましょう。
停止が長引くと、負担は少しずつ積み重なります
短時間で復旧すれば、
一時的な対応で済むかもしれません。
けれど、数日、さらに長期間と、
使えない状態が続く場合も想定しておきたいところです。
記録や確認に、時間がかかる
普段は画面で確認できる情報を、
紙で探したり、
電話で問い合わせたりする。
同じ変更内容を、
複数の記録へ書き写す。
こうした作業が重なると、
普段のケアと並行して行うことが
難しくなる可能性があります。
その負担を、
「職員が少し頑張ればよい」で
済ませないことが大切です。
最新の情報を、共有し続ける必要がある
停止中も、利用者さんの生活は続きます。
体調や介助方法が変わることもあれば、
受診や入退院が必要になることもあります。
最初に紙へ切り替えるだけでなく、
その後の変更を、
勤務の違う職員にも伝え続ける必要があります。
どこを見れば最新の情報が分かるのか。
誰が更新し、
どのように申し送るのか。
長引くほど、
こうしたルールの大切さが増していきます。
職員にも、不安や疲れが出てくる
「確認が抜けていないだろうか」
「いつになったら、元に戻るのだろう」
慣れない方法での仕事が続けば、
気を張る時間も増えると思います。
対応する人が固定されたり、
残業が続いたりしていないか。
運営側には、業務の優先順位や
応援体制を見直すことも求められます。
職員も、無理が続いているときは、
具体的な状況を伝えて構いません。
復旧しても、すぐに普段どおりとは限りません
ソフトが使えるようになると、
ほっとすると思います。
ただ、停止中に残した紙の記録を、
どう扱うかという作業が残ります。
例えば、
- どの記録をシステムへ入力するか
- 紙の記録をどのように保管するか
- 重複や記入漏れをどう確認するか
- いつから通常の記録方法へ戻すか
こうしたことを、
職場でそろえて進める必要があります。
職員がそれぞれの判断で入力すると、
同じ内容を重ねて入力したり、
必要な記録が抜けたりする可能性があります。
復旧後の確認や整理も、
業務の一部として考えておきたいですね。
また、サービスの再開と、
情報漏洩に関する調査や説明の終了は別です。
調査や利用者さんへの対応が、
その後も続く場合があります。
介護職員が、普段から確認できること
個人でできる技術的な対策には、
限りがあります。
それでも、仕事の中で
確認しておけることはあります。
① 使えなくなったときの連絡先
最初に誰へ報告するのか。
夜勤や休日には、
どこへ連絡するのか。
いつもの連絡ツールも使えない場合、
何で連絡を取るのか。
連絡先が、使えなくなったシステムの中にしか
入っていない状態では困ります。
職場で決めた方法で、
確認できるようにしておきましょう。
② 代わりの記録方法と、最新情報の場所
紙に切り替える場合、
どの用紙を使い、
どこへ保管するのでしょうか。
食事や介助方法などの変更は、
どこへ記載するのでしょうか。
必要な情報を探す場所が分かるだけでも、
対応の迷いを減らせます。
新しい用紙を増やす前に、
今ある手順や資料で対応できるかを
確認してみましょう。
③ 情報が足りないときの相談先
新規利用や退院後の受け入れで、
必要な情報が確認できない。
手元の資料と、
申し送りの内容が違っている。
そんなときに、
誰へ確認するかを知っておきます。
分からない部分を、
思い込みで補わないことが大切です。
④ いつもと違うことを、早めに報告する
突然ログインできなくなった。
見慣れない画面が表示された。
不審な連絡が届いた。
こうしたとき、
自分で原因を突き止める必要はありません。
いつ、どの端末で、
何が起きたのかを、
分かる範囲で伝えましょう。
自己判断で初期化したり、
設定を変えたりせず、
職場の手順や担当者の指示に従います。
家族への説明も、職員一人で抱えない
利用者さんや家族から、
「うちの情報は大丈夫ですか」
と聞かれることも考えられます。
安心してもらいたい気持ちから、
「大丈夫だと思います」と
答えたくなるかもしれません。
けれど、確認できていないことは、
断言しないようにしたいですね。
施設として確認できている内容と、
問い合わせ先を共有しておくことが大切です。
例えば、まだ調査中であれば、
「現在、施設で確認しています。
詳しいご案内は担当者からお伝えします」
と、確認できている範囲で伝えます。
説明する内容や担当者をそろえることも、
現場を支える備えになります。
備えを、職員個人の努力で終わらせない
施設では、すでに
BCPを作成していると思います。
BCPとは、災害などで普段どおりに働けなくなっても、
必要なサービスを続けるための計画です。
厚生労働省は、医療機関向けに、
サイバー攻撃を想定したBCPの確認表や
ひな形も公開しています。
介護の現場でも、
今ある計画や障害時の手順に照らして、
「ソフトが長く使えない場合にも、
対応できるだろうか」
と確認することが、備えの一つになります。
例えば、運営側で整理しておきたいのは、
次のような点です。
- ソフトの会社と施設の役割分担
- 停止中も優先して続ける業務
- 最新情報を更新・共有する方法
- 新規受け入れや緊急時の判断体制
- 長期化した場合の人員や業務の調整
- 家族への説明と問い合わせの窓口
- 復旧後の記録の整理方法
現場からは、
「夜勤中は、その担当者に連絡がつかない」
「この用紙では、変更が分かりにくい」など、
実際に困りそうなことを伝えていきます。
計画を作る人と、
現場で使う人が、
一緒に確かめられるとよいですね。
次の申し送りで、一つ確認してみませんか
すべてを一度に整えようとすると、
負担に感じるかもしれません。
まずは、こんな問いからでも構いません。
「今夜、記録のソフトが使えなくなったら、
最初に誰へ連絡しますか?」
そこが分かっていれば、次に、
「最新の情報は、どこで確認する?」
「数日続いたら、何に困りそう?」
と考えていけます。
大きな対策を一人で考えるよりも、
普段の仕事に置き換えて、
一つずつ確認していきましょう。
利用者さんの暮らしを、続けるために
サイバー攻撃のニュースは、
介護職員にとって、
少し遠い話に感じるかもしれません。
けれど、いつもの仕組みが止まれば、
その影響は、
利用者さんの暮らしを支える仕事にも届きます。
だからといって、
職員が復旧まで背負う必要はありません。
必要な情報を確かめる。
分からないことを報告する。
無理が続く前に、状況を伝える。
そうした現場の声が、
施設の判断や備えを支えます。
「もし止まったら、どうしよう」を、
「そのときは、こうしよう」へ。
利用者さんも、働く仲間も、
できるだけ安心して過ごせるように。
まずは、今ある手順を
一緒に確認するところから
始めてみませんか。
ご本人やご家族向けの対策は、
こちらの記事で紹介しています。
※本文の業務への影響は、介護現場で起こり得る場面を想定したものです。特定の事業者で、これらすべてが発生したことを示すものではありません。実際の対応は、施設の手順や管理者の指示、サービス提供会社の公式案内をご確認ください。


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