現場の困りごとを記録し、
業務の状況を見える化したものの、
「記録した結果を、
どう改善につなげればよいのか分からない」
「大きな変更をすると、
かえって現場が混乱しそう」
このように感じることも
あるのではないでしょうか。
業務改善では、
最初から大きな成果を
目指す必要はありません。
まずは課題を一つに絞り、
現場で無理なくできる方法を
短期間だけ試してみます。
その結果を確認しながら、
続けるか、修正するかを
判断することが大切です。
第3回研修では、
第2回で記録した結果をもとに、
現場で実施できる
小さな改善策を考えます。
研修時間は約15分です。
職員同士で話し合い、
試す改善方法、担当者、実施期間、
結果を報告する日を決めます。
第3回研修の目的
第1回研修では、
現場の小さな困りごとを見つけました。
第2回研修では、
困りごとの回数や時間、
利用者さんや職員への影響を
確認するための記録方法を決めました。
第3回では、
集めた記録を振り返り、
現場で無理なく試せる
改善策を一つ決めます。
改善策を考えるときは、
職員の負担軽減だけでなく、
利用者さんの安全と
ケアの質を守れるかどうかも
確認します。
第3回研修でできるようになってほしいこと
今回の研修では、
次の内容を目標とします。
- 記録した結果から課題を整理する
- 優先して取り組む課題を一つに絞る
- 現場で試せる小さな改善策を考える
- 担当者と実施期間を決める
- 改善の結果を確認する方法を決める
- 利用者さんへの影響を確認する
改善策を話し合うだけで終わらせず、
誰が、いつまで、どのように
取り組むのかを決めます。
第2回研修の振り返り
第2回研修では、
業務の状況を見える化するために、
次の内容を決めました。
- 記録する目的
- 記録する項目
- 記録方法と記録場所
- 記録する担当者
- 実施期間
- 結果を報告する日
第3回研修を始める前に、
実際に集めた記録を確認します。
記録が十分に集まらなかった場合も、
失敗と考える必要はありません。
- 記録項目が多すぎなかったか
- 記録する時間がなかったのか
- 記録場所が分かりにくかったのか
- 職員に目的が伝わっていたか
記録できなかった理由も、
業務を見直すための
大切な情報になります。
第1回から続く架空事例
本記事では、
研修の進め方を確認するために
架空事例を使用しています。
研修の流れを確認した後は、
自施設で実際に挙がっている課題へ
差し替えて検討することもできます。
その場合は、
利用者さんや職員が
特定されないように配慮してください。
記録した結果
第1回の委員会では、
夕食前に食事用エプロンや、
とろみ剤用のスプーンを
探すことが多いという
困りごとが挙がりました。
第2回では、
日付、時間帯、探した物品、
探すためにかかった時間などを
1週間記録しました。
その結果、
次のことが分かりました。
- 物品を探した場面は1週間で11回あった
- 多くは夕食の準備時間に起きていた
- 食事用エプロンを探す場面が多かった
- 1回につき平均3分程度かかっていた
- 職員によって物品を戻す場所が異なっていた
- 利用者さんを待たせることがあった
「物品を探すことが多い」という
感覚的な困りごとから、
いつ、何を、どのくらい探しているのかが
分かるようになりました。
※回数や時間は、
研修用に設定した架空の数値です。
記録した結果から課題を整理する
改善策を考える前に、
記録から分かったことを整理します。
今回の架空事例では、
次のような課題が考えられます。
物品の保管場所が統一されていない
職員によって、
使用後に物品を戻す場所が
異なっていました。
同じ物品が複数の場所にあると、
必要なときに見つけにくくなります。
夕食前に探す場面が集中している
物品を探す場面は、
特に夕食の準備時間に
多く発生していました。
忙しい時間帯に探し物が重なることで、
職員の焦りや業務の中断に
つながっていました。
利用者さんを待たせることがある
物品が見つからないことで、
食事の準備が遅れ、
利用者さんを
待たせる場面がありました。
職員の負担だけでなく、
利用者さんへの影響も
確認する必要があります。
小さな改善とは
小さな改善とは、
現在の業務をすべて
変更することではありません。
課題を一つに絞り、
限られた場所や期間で
試してみる取り組みです。
今回の架空事例では、
次のような改善策が考えられます。
- 食事用エプロンの保管場所を一か所にする
- 棚や収納場所に表示を付ける
- 使用後に戻す場所を統一する
- 夕食前に物品を確認する担当者を決める
- 一つのユニットで1~2週間試してみる
最初から施設全体で変更すると、
現場が混乱する可能性があります。
まずは一部の場所で試し、
問題がないかを確認してから
広げていく方法もあります。
改善策を決めるときのポイント
改善策を決めるときは、
次の点を確認します。
利用者さんの安全を守れるか
業務時間が短くなっても、
利用者さんの安全が損なわれては
改善とはいえません。
事故やケアの遅れ、
物品の取り違えなどが
起きないかを確認します。
ケアの質を下げないか
職員の作業を減らすことだけを
目的にしないようにします。
利用者さんへの声かけや見守り、
必要なケアが省かれないかを
確認します。
現場で続けられるか
手順が複雑だったり、
新しい記録が増えすぎたりすると、
改善策そのものが
職員の負担になることがあります。
誰でも分かりやすく、
無理なく続けられる方法を考えます。
改善前後を比べられるか
改善を試した後は、
本当に変化があったのかを確認します。
例えば、次のような内容を
改善前と改善後で比べます。
- 物品を探した回数
- 探すためにかかった時間
- 利用者さんを待たせた回数
- 職員から出た意見
- 新たに発生した困りごと
改善策は一つに絞ります
話し合いでは、
さまざまな改善案が
出ることがあります。
しかし、複数の改善策を
一度に始めてしまうと、
どの取り組みによって
変化が起きたのかが
分かりにくくなります。
まずは、取り組みやすく、
利用者さんや職員への影響が大きい課題を
一つ選びます。
今回の架空事例では、
「食事用エプロンの保管場所を統一し、
収納場所に表示を付ける」
という改善策から
試すことにします。
改善を試す前に決めること
改善策を実施するときは、
次の内容を具体的に決めます。
- 試す改善方法
- 実施する場所
- 担当者
- 実施期間
- 職員への伝達方法
- 確認する項目
- 結果を報告する日
「できる人が行う」
「しばらく試してみる」ではなく、
担当者や期限が分かる形で
記録に残します。
第3回研修の進め方
第3回研修は、
約15分で実施できます。
0~2分|第2回の振り返り
第2回で決めた
記録の目的や方法を確認します。
記録が十分に集まらなかった場合は、
その理由も共有します。
2~4分|記録した結果を確認する
回数や時間、発生した場面、
利用者さんと職員への影響を確認します。
個人の責任ではなく、
業務の仕組みとして考えます。
4~8分|改善方法を話し合う
記録した結果をもとに、
現場で試せる改善方法を考えます。
利用者さんの安全と
ケアの質を守れるかも確認します。
8~11分|試す改善策を一つ決める
話し合いで出た案から、
無理なく試せるものを一つ選びます。
改善の範囲を広げすぎず、
短期間で確認できる内容にします。
11~13分|担当者と実施期間を決める
改善策を実施する担当者と、
試す期間を決めます。
必要に応じて、
職員への周知方法も決めます。
13~15分|確認方法と報告日を決める
改善前後で比較する項目と、
委員会へ結果を報告する日を決めます。
決定した内容は、
委員会記録や取り組み管理表へ残します。
第3回研修資料のダウンロード
第3回の研修で使用できる資料を
まとめています。
- PowerPoint
- 閲覧・印刷用PDF
- 進行ガイド・配布資料
- 委員会記録・取り組み管理用Excel
PowerPoint・PDF・Word・Excel入り/無料・登録不要
資料は、施設名や役職名、
実施方法などを、
自施設の状況に合わせて
変更して使用してください。
架空事例を使用して研修した後に、
自施設で実際に挙がっている課題へ
差し替えて話し合うこともできます。
改善を試した後に残す記録
改善策を実施したときは、
次の内容を記録します。
- 取り組んだ課題
- 試した改善方法
- 実施した場所
- 担当者
- 実施期間
- 改善前の状況
- 改善後の変化
- 利用者さんへの影響
- 職員から出た意見
- 新たに見つかった課題
- 継続・修正・中止の判断
期待した結果が得られなかった場合も、
大切な記録になります。
なぜ続けにくかったのか、
どの部分を変更すればよいのかを確認し、
次の改善につなげます。
改善がうまくいかなかったときは
改善策を試しても、
思ったような変化が
見られないことがあります。
その場合は、
取り組み自体を失敗と考えず、
次の点を確認します。
- 課題の捉え方は適切だったか
- 改善方法が複雑ではなかったか
- 職員へ十分に伝わっていたか
- 実施期間が短すぎなかったか
- 担当者に負担が集中していなかったか
- 新たな安全上の問題はなかったか
続けにくい理由を確認し、
改善方法を小さく修正します。
中止する場合も、
その理由を記録に残しておきましょう。
資料を利用する際の注意点
本記事で配布する資料は、
介護施設における委員会や
職員研修を支援するためのひな型です。
資料を使用したことや、
研修を実施したことだけで、
生産性向上推進体制加算(Ⅱ)を
算定できるわけではありません。
実際の算定には、
委員会の開催や安全対策、
対象となるテクノロジーの導入、
継続的な業務改善、
実績データの提出などが
必要です。
制度や提出方法は
変更される可能性があります。
厚生労働省や自治体、
指定権者が公表している
最新の案内を確認してください。
また、研修や記録では、
利用者さんや職員が
特定されないように配慮します。
施設の個人情報保護方針や
業務マニュアルに合わせて
内容を調整してください。
これまでの研修
第3回研修は、
第1回・第2回の取り組みをもとに
進める内容です。
まだ実施していない場合は、
次の記事から確認できます。
参考資料
本記事および研修資料は、
厚生労働省が公表している資料を参考に
作成しています。
- 介護分野における生産性向上について|厚生労働省
- 介護サービス事業における生産性向上ガイドライン|厚生労働省
- 生産性向上推進体制加算(Ⅰ)及び(Ⅱ)の解説|厚生労働省
- 利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会のポイント・事例集|厚生労働省
制度の内容や算定要件は、
変更される可能性があります。
実際に取り組む際は、
厚生労働省や自治体・指定権者が
公表している最新情報をご確認ください。
次の研修へ
第3回で改善策を試した後は、
その結果を振り返ります。
第4回では、
改善前と改善後の変化を確認し、
取り組みを続けるか、
修正するかを話し合います。
うまくいったことだけでなく、
続けにくかったことや、
新しく見つかった課題も
整理します。
小さな改善を繰り返しながら、
利用者さんに向き合う時間と、
職員が安心して働ける環境を
少しずつ整えていきましょう。


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